ことば音楽療法と太田ステージ StageⅠその① ことば音楽療法 京都

言葉がみられない子供のレッスン内容は、まず以下のようなことをします。
2歳前~3歳代年齢の場合

 

リズム:きらきら星等で337拍子のリズムを感じる
    果物の玩具を持ってリズム打ち
    リズム打ちができなくても、言葉歌を聴き、拍を感じる
動作模倣:手合わせ、バンザイなど大きな動作
     舌だし、首振りなど見えない部位、小さな動作
指さし:セラピストが指さしした先を注目する。型はめ板のはめ込みなどに注目する。
    目標物を指さしする
ちょうだい:セラピストに玩具を渡す。玩具を受け取る。
吹く:ラッパや羽根を吹く。強く、弱く吹く。
2音節語の言葉歌を聴く:絵カードを見ながら、言葉歌を聴く。
            リズム感と語音分解を促す。
取り組み課題:型はめ板、円柱さしなど、目と手を使う。

 

これらの課題を行う際は、言葉歌のメロディーとリズムを入れて、認知機能や情緒を高めます。セラピストは、言葉歌を歌い、子供の反応を引き出します。

 

少し例を挙げますと、
ちょうだいの練習ですが、
セラピストが手を出し「りんご、ちょうだい」とただ単に言うよりは、
わらべ歌の音階で「り、り、りんご~、りんごを~ちょうだい!」と
337拍子のリズムに乗り、勢いをつけてセラピストが手を出すと
子どもはリンゴを差し出すことがあります。
できない場合は、セラピストは子供の手を持ってリンゴを出す練習をします。
手を持つことも、歌うことで、子どもは嫌がらずに受け入れてくれます。
できた場合は、大いにほめます。

 

指さしの理解の練習は、
例えば、型はめ板の際に、
セラピストは「こ、こ、ここに~、こ~こに、入れる!」と歌いながら、
はめ込みの穴を指さし、指さしを理解させます。

 

指さしをする練習は、
セラピストは人差指で、子供の人差指の先を触れて、
「ゆび、ゆび、こ~こ」と歌い、自分の人差し指を認知してもらいます。
そして、指さす目標物に人差し指で触れるよう歌で誘導します。
「り、り、りんご、りんごは、こ~こ!」
できない場合は、セラピストは子供の手を持って指さしの形を作り、
歌いながら指先で触れさせて教えます。

 

取り組み課題の際は、子供の行為を言葉歌のメロディーで歌います。
例えば、型はめ板をしている子供の行為を言葉歌で歌います。
「しかく(四角)~、しかく~、しかくを、はめる! しかくをはめた!カチッ!」
と子供の行為を歌いオノマトペを入れて、行動を明確にします。
音と行動の一体化。
行為しながら、その行為の歌を聴くことで、自分の行為が認知できます。
また、内言語への働きかけるにもなります。

 

着席をしない子供への着席の促しにも言葉歌を用います。
座る椅子を示しながら「す、す、すわる、い~すに、すわる!」と歌うと
はじめは座れない子も、次第に理解でき座れるようになります。

 

言葉がみられない段階は、
太田ステージによりますとStageⅠ(シンボル機能が認められない段階)となります。
「StageⅠの治療教育は、目標は、人や物への認識を高めること、言語などのシンボル機能の芽生えを促すこと、日常生活の範囲内での適応行動を促すことである」とあります。①

 

ことば音楽療法の言葉歌を用いて、
レッスン課題を一緒に取り組むことで人や物への認識を高め、
シンボル機能の芽生えについては、まず指さしを理解・表出ができるようにし、
大人で他人のセラピストと接することで、対人関係や課題の達成感を共有する体験をし、
日常生活でも生かせるように導くことを目指していきます。

 

①自閉症治療の到達点 引用 p139

ちょうだい、指さしの練習でよく使う玩具です。